海水の水質を調べるとき、必ず測定してほしいものの一つとして「アルカリ度」があります。
マリンアクアリウムでのアルカリ度は、「海水のpHが下がらないようにする働きがどの位あるのか?」がわかる指標で、このアルカリ度の成分の働き無くしてpHの低下を防ぐことはできません。
pHは生態系のバランスを保つ重要な環境要因の一つで維持・安定させておく必要があります。特にpHが変化しやすい閉鎖環境の水槽においてはアルカリ度は重要な水質管理項目の一つです。
水質調整剤の中でpH緩衝剤(バッファー剤)といっているものが、この「アルカリ度」を強化し、低下したpHを上昇・安定させる添加剤です。それ以外にもアルカリ度を強化するものとしてはカルシウムリアクターがあります。二酸化炭素を用いて炭酸カルシウムを溶かし、アルカリ度の主成分である炭酸イオンを水槽内に供給します。もちろん同時にカルシウムイオンも供給するので、カルシウムリアクターは主に骨格形成に欠かせないサンゴ飼育水槽で使用されています。また、自然の働きからもアルカリ度成分は供給されます。その場合は底砂やろ材にサンゴ砂などが使われていて、その主成分である炭酸カルシウムが自然に溶け出すことによって炭酸イオンが供給されます。ただし、好気下の海水中に酸性物質が増えてpH値が低下した場合は低pH(7.6位)でアルカリ度が維持している状態になり、魚水槽であればしばらくは影響はなく、多少カルシウム過多になるくらいで問題なさそうに見えます。また、その時サンゴ水槽であれば骨格が形成できない(サンゴの骨格はpH7.8以下では形成しない。)環境になります。そして、そのまま低pH環境がしばらく持続し、やがてアルカリ度が急に上昇し出します。こうなると水槽内の環境は劣悪になり、やがて魚が次々と病気や原因が解らずに死んでいくようになります。これらは低pH環境において生態系のバランスが変化して悪玉菌の増殖したことによる病死と硫化水素が発生したことによる酸欠が原因と考えられます。なぜなら硫化水素が発生するとアルカリ度が急に上昇するからです。このようなことにならないように、普段からpH7.8以下にまで下がらないように、(嫌気層の管理ができることを前提に、)水換えをしてバッファー剤やカルシウムリアクター(サンゴ水槽の場合)を使ってアルカリ度成分を補給し、pHを適正値で維持することをお勧めします。
pH値はpH8.1~8.2、サンゴ水槽でpH8.2~8.4。
アルカリ度は3.5~5.5meq/l。脱窒作用を働かせたプレナム水槽やウエット濾過槽などでは2.5~3meq/lで維持することをお勧めします。
「アルカリ度」はドイツのKarbonatharte 「KH」(英語ではCarbnate Hardness、日本語では炭酸塩硬度?、一時硬度?)でも調べることができます。
本来、この2つの言葉の意味は全く別なものですが、試薬での測定法が同じなので、アルカリ度を表す指標としているみたいです。(もちろん、単位が違うので数値は変わります。)「アルカリ度」とは?・・化学の本では「強電解質の陽イオンの当量数から強電解質の陰イオン当量数を引いたもので、・・・・」といっても難しい。解りやすく言うと、海水がpH8位のアルカリ性だということは皆さん知っていると思いますが、そのアルカリ性になる成分がどのくらい含まれているのかを表しているのが「アルカリ度」です。ですから、市販の簡易「アルカリ度テスター」では酸を一滴づつ加えていき、酸を中和するアルカリ成分が無くなる(中和する)pH値まで下がると色が変わる指示薬を使って、その加えた酸の量から換算してアルカリ成分の総量を測ります。同じく「KHテスター」もその測定法は酸を使って炭酸塩(アルカリ度の主成分)を中和して滴定する(中和滴定)方法を用いています。ただし、2つのテスターの単位は異なります。アルカリ度の単位はこれまた難しく、濃度の単位として(ミリ当量数/L)を使っています。
ミリ(milli)当量数(equivalent)/Lで単位は(meq/L):メック パー リットルと呼びます。これは「1リットルに何ミリ当量数含まれているか」を表しています。「当量数」とは?・・「化学反応性に基づいて定めた反応単位数で式量を割ることによって得られる一定量」・・・またまた難しい。とにかくこんな単位として覚えてください。それに対してKHの単位は ドイツの単位で、炭酸塩の濃度を酸化カルシウム量に換算して「゜dH」として表しています。同じ成分の濃度の単位としてあるので、この2つには次の関係式が成り立ちます。
アルカリ度(meq/l)×2.8 ≒ KH(゜dH)
具体的には、アルカリ度として存在する海水中の成分とは炭酸水素イオン(HCO3-)、炭酸イオン(CO32-)、ホウ酸イオン(H2BO3-)、水酸イオン(OH--H+)のことです。それに対して、KHは炭酸塩の濃度のことなので本来の意味からすると炭酸水素イオン(HCO3-)と炭酸イオン(CO32-)からなる炭酸塩の総量のことですから、アルカリ度と測定方法が同じであればKHの方が誤差が大きくなるはずです。そこで≒としています。しかし、KHをアルカリ度の別の単位としてみる上では問題ないので、KHもアルカリ成分の量を示すものとしています。
いろいろとお話しましたが、アルカリ度やKHの表す意味を解りやすく言葉を変えて言うと
アルカリ度もKHも「pHの低下を防ぐ働きの強さ」を表しています。
また、造礁サンゴの成長からすると、「造礁サンゴの健全な骨格形成環境の目安」とも言えます。造礁サンゴの骨格形成に必要な成分としてカルシウムイオンやマグネシウムイオン、ストロンチウムイオンは良く知られてきましたが、それと対になり、結合する炭酸水素イオンに関してはまだ気にされていないように思います。造礁サンゴは海水中の炭酸水素イオンを使って炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムとして骨格を形成しています。従って、海水中のアルカリ度の大半を占める炭酸水素イオン濃度が下がってくるとpHの低下と共に造礁サンゴの骨格形成の働きが鈍くなり、健全な成長が望めなくなります。